【実践コラム】リスケ交渉をスムーズに進めるための勘所


…リスケを考えている社長様はご一読ください

あるお客様からの相談です。
「資金繰りが厳しいため、A行にリスケの交渉をしたところ、『毎月20万円は返済してください。』と言われた。その後B行に行くと、『当行はA行の3倍の融資残高があるので、返済もA行の3倍、60万円の返済をしてもらわないと困る。』と言われた。80万円の返済はとても厳しい状況だが・・・」

銀行がリスクを殆ど負っていない信用保証協会の保証付き融資は、比較的スムーズにリスケに応じてもらえますが、プロパー融資となると銀行の対応は途端にシビアになります。ご相談に来られたお客様もプロパーの借入が多くありました。

銀行担当者の立場で考えてみます。
「リスケに応じるという事は、『返済してもらえる権利』を自ら放棄するという事だ。リスケをすることで倒産を免れ、将来的にまた正常な返済をしてもらえるならメリットがあるが、リスケをした後に倒産しようものなら、『返済してもらえる権利』を放棄したことが責任問題になる。リスケに応じず少しでも回収を進めなくては・・・」

(民間の)金融機関がリスケに応じるのは、リスケに応じた方が、応じないよりも回収額が増えるという客観的な判断が出来る場合のみです。よって、リスケの交渉には、「このまま返済を続ければ、倒産という多大な迷惑をかけてしまう可能性があるが、返済を待ってもらうことで倒産は回避出来、業績も回復する。そして数年後からは元通りの返済が出来るようになる。」というストーリーが必要です。

但し、担保を入れている場合は注意が必要です。融資金を上回る担保があれば、会社が倒産したところで回収に影響はありませんので、「リスケに応じて管理コストが増えるより、さっさと担保を処分して融資金を回収し、別のお客様に融資した方が得策だ。」
と判断される場合があります。

もちろん銀行員も人間ですから、個人的には人間関係のある社長様を倒産に追い込むようなことはしたくないはずです。「担保でいつでも回収出来るのだから、少しぐらい待っても良いのではないか。」という考え方で、逆に寛容に対応してもらえる場合もあります。
すべてがビジネスライクに判断されるのではなく、感情的な部分にも影響されるのが実情です。

社長様のお話によると、「個人で保有する収益物件を担保に入れている。これまでも延滞を繰り返しているが、銀行に対して説明をしたことは一度もなかった。」との事でした。担保による回収の算段がついており、心象も良くないことが、リスケに非協力的な要因のようです。延滞の放置は最も心象が悪くなる対応で、銀行側が「相手が誠意を見せないのだから協力する必要もない・・・」と、倒産に追い込むことを自己肯定する材料にもなってしまいます。

◆リスケ交渉をスムーズに進めるための勘所は以下となります。
・言い分があっても、契約を違えることは間違いないため、先ずはお詫びの姿勢が原則です。
・試算表や資金繰り表を提示して、リスケに応じてもらえれば「倒産しない」ことを明確にします。
・概ね5年以内に業績が改善する計画を立て、リスケに応じてもらえれば「数年後には正常な返済が可能になる」ことを説明します。

建設的な議論にするため、まずは感情面の溝を埋めるところからスタートしましょう。
次に試算表や資金繰り表を用いて、現状を包み隠さずディスクローズします。
リスケに協力してもらえれば資金は回ることを説明し、さらに今後どうやって業績を改善していくかも説明します。そして、これらの説明は口頭ではなく、必ず文書で提出する必要があります。