【実践コラム】金融マンのジレンマ


…貸したい気持ちと貸したくない気持ちの間で揺れています

企業が銀行等から融資を受けやすくするため、国の機関である信用保証協会が保証を行う制度は広く知られています。保証協会以外にも、金融機関によっては、民間のクレジット会社の保証により融資を受けやすくする商品を有しています。保証協会と同じく、企業がクレジット会社に保証料を支払って銀行等から融資を受ける仕組みです。

1年程前、懇意にしている金融機関の担当者から、この民間クレジット会社の保証付き融資商品を案内されました。保証料と金利は高めに設定されておりますが、スピード審査が特徴で、創業したばかりの方でも利用出来るとのことです。

その後も熱心に紹介の依頼を受けましたが、保証料と金利が高いため積極的に利用したいというお客様は少なく、中々お客様を紹介出来ずにいました。ところが、つい先日、日本政策金融公庫で創業融資を受けて事業を始めたばかりのお客様から、保証協会で融資を断られたため、こちらの商品を利用したいとの申し出がありました。

早速金融機関の担当者をお呼びして相談したところ、非常に困った顔で次の説明を始めました。

「この商品は、頂いた保証料をプールしておき、何かあった場合はプールしていた保証料で損失を埋める仕組みです。実は、つい先日初めて貸し倒れが発生しました。これにより保証料の5分の1が既に失われています。クレジット会社の保証はプールしている保証料の額が上限ですので、それを超える貸し倒れが発生した場合、自分たちで補てんしなくてはなりません。プロパー融資と同じ扱いです。発売を開始して1年足らずでデフォルトが発生したため、審査部がこの商品に対して急にネガティブになっています。もちろん、こちらから強くおすすめしていた商品ですし、融資額のノルマもありますので、お受けするつもりです。ただ、もし、今ご融資をして6か月以内に何かあったら、正直私の立場は非常に危うくなります・・・先生!こちらのお会社は本当に大丈夫でしょうか。」

金融機関の新規開拓営業は特殊です。新規融資のノルマを課せられながら、貸し倒れの発生は絶対にNGです。頑張って新規融資をたくさん獲得した営業マンほど、貸し倒れのリスクも大きくなるという矛盾があります。彼からも、貸したいような貸したくないような・・・といった複雑な心境を感じ取る
ことが出来ました。

もちろん、独立したばかりの方が順調に立ち上がるかどうかなど誰にも分かりません。
資金繰り表をお見せして、少なくとも6か月は資金繰りに問題がないことをお伝えし、納得して頂きました。