【実践コラム】短期借入と長期借入について


…それぞれの特徴と利用時の注意点を解説します

借入には1年以内に返済期日が到来する短期借入と、返済期日が1年超の長期借入があります。運転資金の借入は短期借入で行うのが一般的で
したが、近年は運転資金の借入も長期で行うことが多くなっています。「長期運転資金」という名目です。

◆短期借入と長期借入の違い

短期借入と長期借入は、返済期間だけでなく、「返済原資」も違います。返済原資とは、返済に充てられる資金のことです。

短期借入の返済原資は売掛金の回収金です。モノやサービスは売れたが、代金の回収までに時間を要する場合、その資金ギャップを埋めるために利用するのが短期借入です。よって、返済は回収した売上代金で行います。赤字の会社でも短期融資を受けられることがあるのは、返済原資が利益ではなく売上代金の
回収金であるためです。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。よって、赤字、かつ将来も利益がでる見込みがない場合は、返済原資がありませんので長期借入は困難です。

◆短期借入と長期借入のメリット・デメリット

短期借入の返済方法は期日一括返済であることが多く、期日に期限を延長してもらえるならば、ずっと返済をしなくても良いというメリットがあります。しかし、期日に期限を延長してもらえなかった場合は、まとまった返済資金を用意しなくてはならない点がリスクです。

長期運転資金は毎月一定の約定返済があるため、計画的に返済をしていくことが可能です。しかし、1,000万円の資金ギャップを埋めるために1,000万円の借入をしても、約定返済分は資金が不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなくてはならないという点がデメリットです。

◆短期と長期どちらで調達を行うべきか

資金繰りの観点から考えると、毎月発生する資金ギャップ(経常運転資金)は約定返済のない短期借入で調達し、利益は返済に回さずにキャッシュに積み上げることで資金繰りは安定します。投資回収に長い年月を要する設備投資や、更なる売上拡大に挑戦するための運転資金(増加運転資金)は、利益が出るま
でに時間を要するため、長期借入で調達した方が資金繰りは安定します。