【実践コラム】中小規模企業の価格戦略


…良いものを適正価格で提供することを目標にしましょう

経営者として、お客様に良いものを安く提供したいと考えるのは当然です。
しかし、「良い」ものを「安く」提供することは、簡単なことではありません。
目指すことは良いことですが、すぐに実現できるものではないと考えます。

良いものを安く提供するのは難しいと感じた時に、「まずは良いものを適正価格で提供しよう。」と考える方と、「まずは普通のものを安く提供しよう。」と考える方がいらっしゃいます。中小規模企業が取るべき価格戦略は、間違いなく前者だと考えますが、後者を選ばれる方も案外多いようです。

大企業は、その資金力を最大限に発揮して、大量仕入れ、機械化等により原価を抑えています。よって、中小規模企業が、価格面で大企業と勝負をしても、勝てる要素は殆どありません。
誰もが知っている理屈のはずですが、普通の商品やサービスを安く提供しようとする企業がたくさんあるのはなぜでしょうか。

理由のひとつは、安い方が良く売れると信じられているからです。しかし、これについては検証が必要です。原価3,000円の普通の商品を、10,000円で販売した場合と、7,000円で販売した場合を比べてみます。10,000円の場合、42.8個を販売すれば100万円の粗利益を獲得できます。同じ粗利益を獲得するのに、7,000円の場合は250個の販売が必要です。確かに、10,000円よりも7,000円で販売した方が多く売れることは予想できますが、価格が安いだけで1.75倍も販売個数が増えるかは疑問です。

また、販売個数を増やすためには広告宣伝費も余分に必要になります。販売に対応する人件費等も増加します。もし、ライバルが値引きをしてきた場合は、更なる値引きに対応しなくてはなりません。やはり、普通の商品やサービスを、価格だけで差別化を図ろうとするのは困難です。

資金や人的資源が不足しがちな中小規模企業は、大量販売は難しいという視点に立ち、少ない販売個数でも利益が出せる販売単価と価格の設定をおすすめします。安く提供したいという思いは一旦横に置いておき、良いものを適正な価格で買ってもらうことを、第一段階の目標としてはいかがでしょうか。