【実践コラム】金利交渉について


…バランスの良い金利交渉を心がけましょう

融資を受ける際の金利が決まるメカニズムは、企業側には良く分かりません。金利に無頓着すぎると相場よりも高い金利を支払わされる可能性がありますし、金利にこだわりすぎると金融機関から融資取引そのものを敬遠される可能性があります。

◆制度融資の金利
日本政策金融公庫や保証協会の制度融資の中には、あらかじめ金利が決められているものがあります。「不況業種の救済」「独立開業者の支援」といった政府の施策に連動しているため、金利は元々低めに設定されており、誰が利用しても同じ金利です。

◆貸し手の収益構造
信用金庫は、都市銀行に比べて一般的に0.5%から1.0%程度、貸出金利が高く設定されています。これは収益構造の違いが理由です。都市銀行は市場から大ロットで資金を調達し、大企業向けに大ロットで融資を行うため、効率良く資金を調達・運用ができます。一方、信用金庫は、職員が小ロットの定期預金を数多く集め、中小零細企業向けに小ロットの融資を数多く行うため、都市銀行に比べてコストがかかります。取扱高が大きいほど安くなるというのは一般的な商売と同じです。

◆借り手の信用リスク
借り手の信用リスクによっても金利は変わります。金融機関は、借り手の信用リスクに応じて引当金を積んでいますので、引当金以上の金利設定をしなければ取引採算を確保することができません。当然ながら、各融資先の取引採算も見ていますので、採算が取れていない融資先に対しては、採算が合うよう金利を上げてもらう、もしくは取引を解消する、などの対応策を検討しています。

◆金融機関との交渉
貸出金利は、貸し手の調達コストと借り手の信用リスクで決まることが分かりましたが、企業側にとって最も重要なことは、「まず借りる事」です。「金利が○%以下だったら借りても良い。金利が○%超だったら借りない。」というぐらい強い立場であれば話は別ですが、ほとんどの会社は貸してもらえなければ困る立場だと思います。貸し手に収益メリットが無くなるほどの行き過ぎた金利交渉を行った結果、調達そのものが出来なくなっては本末転倒です。1,000万円(返済期間5年)の借入れで金利を0.1%引き下げたとして、5年間で約25,000円、月416円程度の負担軽減にしかなりません。
相手の利を確保することが商売の大原則であることを考えると、最大の事業パートナーである金融機関との金利交渉は慎重に行うことをおすすめします。